右手に剣を、左手に君を



雅はいつも、冷静に俺たちを導いてくれた。


冷たく感じる事や、おっとりしすぎているように思うこともある。


でも本当は、誰より仲間の事を考えていた。


自分の意見は、あまり言わない。


けど、雅の考えている事は、ちゃんと皆に伝わっていた。


キモい表現だけど、

お前は俺たちの兄ちゃんみたいなものだよな、雅。



「十束剣……俺に力を!!」



珍しく、雅が大声を上げた。


と同時に、すさまじい霊気が砂を巻き上げる。


一瞬雅の姿が見えなくなった瞬間、

迦楼羅が懐から、例の横笛を取り出した。



「だめだっ、雅!!」



俺の声が届くより早く……。


雅は、風のような速さで、

迦楼羅に向かって切り込んでいく!!



「燃えろ!」



空亡に釘を刺され、余裕のない迦楼羅は、

その横笛に息を吹き込んだ。