右手に剣を、左手に君を



「あれは……」



青い光を放った渚の胸から、

ずるり、と、刀の柄が現れた。


すさまじい霊力が竜巻のように渦巻く。


俺たちまで吹き飛ばされそうになり、

渚は必死で俺につかまった。



「龍神剣……」



やがて、清らかな水の刀身を持った龍神剣が、姿を現す。



『忠信様……あなたのために』



過去の渚はそういうと、震える手で龍神剣を忠信に差し出した。



「ここから……お前の記憶は曖昧だろう?」



海神が優しく、渚に話しかける。


渚は目を見開き、黙って事の成り行きを見守っていた。


龍神剣を持った忠信は、一人で空亡に向かっていく。


そこで、夢は一瞬途切れた。


あたりは何もない暗闇になる。



「これは……」


「御津忠信が、戦いに必死でよく覚えていない場面だ」


「なるほど……」