右手に剣を、左手に君を



それは、俺の胸を温かくする、幸せな夢物語。


現実はきっと、幸せだけじゃない。


一緒に生きていけば、必ず、

困難にぶち当たる日がくるだろう。


でも、願わずにはいられない。


夢見ずには、いられない。



「……じゃあ、

この町を見捨てるわけにはいかないな……」



それが、君の願いなら。


俺の願いも、同然だから。


渚は真っ赤な顔のまま、ニヘラと笑った。



「うん……」



両手を広げる。


するとそこに、渚は素直に自らの身体をおさめた。


その時。



「善女!!」


「!!」



いつの間に、近づいていたのか。


足音もなく、俺たちの目の前に現れたのは。


鬼のような顔をした、リカさんだった。