それは、俺の胸を温かくする、幸せな夢物語。
現実はきっと、幸せだけじゃない。
一緒に生きていけば、必ず、
困難にぶち当たる日がくるだろう。
でも、願わずにはいられない。
夢見ずには、いられない。
「……じゃあ、
この町を見捨てるわけにはいかないな……」
それが、君の願いなら。
俺の願いも、同然だから。
渚は真っ赤な顔のまま、ニヘラと笑った。
「うん……」
両手を広げる。
するとそこに、渚は素直に自らの身体をおさめた。
その時。
「善女!!」
「!!」
いつの間に、近づいていたのか。
足音もなく、俺たちの目の前に現れたのは。
鬼のような顔をした、リカさんだった。



