「なんで、そんなこと言うの?

そんなこと言うコウくん、嫌いだよ」



責めるような口調で、渚は俺の顔をのぞきこんだ。



「お前は悔しくないのか。

千年前にも人間のために戦って、海から追放されたのに。

今回も……龍神なのに、バケモノ扱いされて」


「そんなの、別にいい。

私は、人間のために戦ってたわけじゃない」



渚はふるふると首を横に振った。



「私は、自分のために戦ってるの。

自分の心のために」


「お前の、心のため……?」


「千年前も、今も一緒だよ。

私は、コウくんのそばにいたいから、戦ってるの。

コウくんが、雅や健ちゃんと、

幸せに生きる世界を守りたいから、命をかけるの」



いつもよりも、しっかりした口調。


そうだった。


こいつは、ふにゃふにゃしてるように見えて、

肝心なところは強いやつだった。