神社は、初詣の時くらい、人が集まっていた。
わらわらと、何かを憎んで集まる様は、人間ではなく魑魅魍魎のようだ。
その光景にぞっとしながら、何とか階段を上がり……。
賽銭箱の前に立った時、誰かが叫んだ。
「神社の息子だ!!」
と。
「いったい何の御用ですか」
声を張り上げると、人々は一瞬黙った。
しかし、すぐに誰かが叫ぶ。
「バケモノを出せ!!」
「そんなものは、ここにいません」
「嘘だ!目撃者がいるんだぞ!
そのバケモノが、うちの息子を……っ!」
倒れたか、行方不明になった若者の親だろう。
もしかしたら、ここにいる人たちはほとんど、そうなのかもしれない……。
「冷静になってください。
どんなバケモノが、ここにいると言うんですか?」
「蛇の尻尾を持った女がいるだろう!!」
……あれでも、龍なんだけど……。
って、そんな事をツッコんでいる場合じゃない。
「そんな生き物が、この世に存在するわけないでしょう」
しかし、人々は引かなかった。
いつもは、神も精霊も信じない人々が、
バケモノはいると信じ込んでいる。



