右手に剣を、左手に君を



あれ以来、力が強くなったなんて事はないんだけど。


忠信が俺より強かったのは、そのせいもあったのか。


神の口づけを、結構たくさん受けてたぞ、あいつ。


っていうか、強引に奪ってた。


そう言えば、キズの痛みを口で治してくれた事があった。


癒しはされたけど、強化はされてないような……。



「善女に意識がなかったからダメなのかしら?

今まで寝ている神に黙って接吻する人間なんて、いなかったから……」


「すみません……」


「でも、やっぱりあなたにはやめておくわ。

善女がヘソを曲げたら困るし」



リカさんは、心底面白くなさそうな顔をした。


それって、渚がヤキモチをやくって事か?


俺は不意に、米倉に絡まれた事を思い出した。


渚は、あれだけでも頬を膨らませていたっけ……。


ぼんやりしてしまった俺の背中を、リカさんがバシッと叩いた。



「いたっ!!」


「代わりにキズを治してあげるから。

妹を頼むわよ」


「は……」



なんて?


聞き違いだろうか。


妹を、頼むだなんて……。



聞く暇もなく、リカさんは手の平から力を放出し、

身体中にあったキズを、ふさいでくれた。