あれ以来、力が強くなったなんて事はないんだけど。
忠信が俺より強かったのは、そのせいもあったのか。
神の口づけを、結構たくさん受けてたぞ、あいつ。
っていうか、強引に奪ってた。
そう言えば、キズの痛みを口で治してくれた事があった。
癒しはされたけど、強化はされてないような……。
「善女に意識がなかったからダメなのかしら?
今まで寝ている神に黙って接吻する人間なんて、いなかったから……」
「すみません……」
「でも、やっぱりあなたにはやめておくわ。
善女がヘソを曲げたら困るし」
リカさんは、心底面白くなさそうな顔をした。
それって、渚がヤキモチをやくって事か?
俺は不意に、米倉に絡まれた事を思い出した。
渚は、あれだけでも頬を膨らませていたっけ……。
ぼんやりしてしまった俺の背中を、リカさんがバシッと叩いた。
「いたっ!!」
「代わりにキズを治してあげるから。
妹を頼むわよ」
「は……」
なんて?
聞き違いだろうか。
妹を、頼むだなんて……。
聞く暇もなく、リカさんは手の平から力を放出し、
身体中にあったキズを、ふさいでくれた。



