「元はと言えば、あなたが弱すぎるせいでしょう!

あなたも、御津忠信も、勝手なのよっ!」



リカさんの目には、うっすらと涙がたまっていた。


先ほどの夢の記憶まで見てしまったんだろう。



「……その通りです……」



こんな事になってしまったのは、逃げてばかりいた俺のせい。


渚を苦しめたのは、忠信の独り善がりの愛情。


だけど。


そんな事ばかり言ってたって、誰も救われない。



「その通りです。

だから、俺に力をください。

今度こそ、渚を守る力を」



まっすぐ見つめると、リカさんは瞳をそらさずに言った。



「……あの子を救ったとしても、あなたには譲らないわよ。

海に帰してもらうから」


「……それは、承服できません。

俺は、渚が好きです。

できるだけ、一緒にいたいと思ってます」


「…………」


「……だけどこれも、俺の独り善がりかもしれません。

だから、渚を救ってから、本人にどうするか決めてほしい」



周りは何も言わず、ハラハラした顔で俺を見守っていた。


しばらく黙って俺をにらんでいたリカさんが、やっと話しだす。



「人間はどこまでも、自分勝手な生き物ね……」