玄関から、急ぐ足音が2つする。


二人の手を借り、着替えていた俺を無視して。


部屋の戸が、勢いよく開いた。



「ちょっと!どういう事ですか!?」


「リカさん!?」



俺はまだ膝の所にあったズボンを、急いで上げた。


ベルトをする背に、冷たい声がかかる。


「その呼び方はやめてって言ってるでしょう!」



着替えを終えて振り返ると、神なのに鬼のような顔をしたリカさんがいた。


そういえば、昨日確かに、「明日迎えに来る」と言っていた。


俺が死にかけた事で、全員がそれを忘れていたんだ。


リカさんは怒りで、わなわなと震えていた。


雅も健太郎も、圧倒されて何も話せずにいる。


やっと追いついたばあちゃんが、はぁはぁ言いながら部屋に入ってきた。



「善女が妖に連れ去られたというのは、本当なの!?」



ぐい、とえりを引っ張られ、詰問された俺は。


こくりと首を縦に振った。


すると、リカさんは青ざめた顔を赤く染め……。



「ぬわぁに、してんのよー!!」



バキッ!!


俺の頬を、思いきりグーで殴った。



「ひでぇ!怪我人に何すんだよ!」



食ってかかった健太郎を押し退け、リカさんは倒れた俺に馬乗りになった。