右手に剣を、左手に君を




「コウくん!!」



渚の悲鳴と、衝撃音が同時に聞こえ……。


俺は、草薙剣を持ったまま宙を舞った。


迦楼羅の攻撃を受けた衝撃で、吹き飛ばされたんだ。



「ぐ、ぁ……っ!」



地面に背中から叩きつけられ、一瞬息ができなくなる。


肺が痛むような感覚の中。


生理的な涙がにじんだ。



「!!や……っ!」



渚の新しい悲鳴が聞こえ、必死で立ち上がる。


すると。


玉藻が、渚を捕らえていたのを発見した。



「渚……っ!!」


「動かないで」



玉藻はその長い爪を、後ろから捕らえられた渚の首もとにかざした。



「渚!力を使え!

お前の力なら、何とでも……」



痛む肺を押さえ、声をしぼりだす。


しかし渚は、悲しげに首をふった。



「できるなら、とっくにやってるよ!

わかんない、わかんないけど、できないの……!」



何だと?


力が使えない?


信じられなくて、ただそちらを見つめていると、玉藻が話しだした。



「あなた、昨日、消滅寸前まで行ったでしょう?

だから、力が弱くなってしまったのよ」


「そんな……!」


「嘘よ……っ!」



渚は玉藻の腕の中でもがく。


しかし水が出る気配も、髪が銀色に戻る気配すらなかった。