「好きだ……」




ピタリ、と渚の動きが止まった。


俺をゆっくり見上げた目は、


この星のように、青くてまん丸だった。


その瞳をまっすぐ見つめ、伝える。


俺の、想いを。



「……聞こえたか……?」


「…………」


「……好き、だよ……。
渚の事が……」


「……うそ……」



渚はまた涙を溢れさせ、首を弱く横にふった。



「嘘じゃない……。
何度も言うけど、こんな嘘がつけるほど、俺は器用じゃない」


「……だって」


「だって?」


「コウくん、前に、
“誰が神に手を出すか”

って、言ったもん……」



渚の言葉は。


ざくりと、俺の胸に突き刺さった。


……いや……。


きっと、彼女は、自分の胸に、

いつもこの刃を突き立ててきたんだ。


忠信を疑いながらの日々で。


そして、ほんの少しの希望は、呆気なく崩れ去る……。



「それは……」


「ごめんね、コウくん」


「渚……」


「私は、もう誰も、信じられない……」



目の前が暗くなっていくのを感じた。


渚の心を……。


誰より傷つけていたのは、俺だったんだ。


忠信と同じ顔、同じ声で、


なんて残酷な事を言ってしまったんだろう……。


それでも、笑ってくれていたのに。


俺は、その笑顔を守れなかった。