二人に勇気づけられて……。


俺は、渚の部屋になっている客間に向かった。



「入るぞ……」



そっとふすまを開けると、まだ寝たままの渚がいた。


気を失ったまま、と言った方が正しいのかもしれない。


俺は音を立てないように気をつけながら、渚の横に膝をついた。



「…………」



本人を前にしたら、また胸が苦しくなってきた。


なあ、渚。


このまま目覚めなければいいなんて、嘘だよ。


本当は。


また、あのまぬけな笑顔を見せて欲しいんだ。


もう、無理だとしても。


そう願わずには、いられない。



「渚……」



そっと、陶器のような頬に手をのばす。


それは半ば、無意識だった。


そういえば、封印から目覚めた時は、キスをしたんだっけ。


先祖がどんな術をかけたかはわからないが、まるでおとぎ話のようだった。


この桜色の唇に、俺は確かにキスをした。


もう一度……。


あの時に、戻れたら。


頬に手を沿わせたまま、ゆっくりと顔を近づける。


願いをこめて。


どうか、許してください、と。