何ですって……?


なんて言ったの……?


利用……?



「あ~あ、やっぱり知らなかったのね」



玉藻はため息をついた。



「本当に記憶をなくしてるのね。

良いわ、教えてあげる。

千年前の事から……」



そうして、玉藻は長い長い話をはじめた。


私は尋常じゃなく震える胸を、抑えるしかできなかった。



「龍神剣の事は、覚えてる?」


「りゅうじんの、つるぎ……?」



その単語を聞いただけで、頭が痛くなる。



「あなたが御津忠信のために産んだ剣よ。

龍神の姫だけが産める、幻の剣。

それは草薙剣より、よっぽど強大な力を持ってるの」



なに……?


何を……


私が、忠信様のために、産んだ剣……?


コウくんの草薙剣より、力がある剣……?



「やめて……」



知らず知らずのうちに、私はそう頼んでいた。



「……聞きたくないって事は、思い出しかけてるのね」


「違う……」


「可哀想に。

人間に利用されて、海に帰れなくなった愚かな姫……」


「違う、違うっ!」



玉藻の声が聞こえないように、耳をふさいだ。


だけど相手は、それを許さない。


油断した隙に私の腕を、力任せに引っ張った。



「!」



パシャ、と水の跳ねる音がして。


私は庭に、引きずり下ろされた。


みるみる濡れていく私の耳に、玉藻がささやく。