「私は……まだ、帰れない……」


「…………」


「約束したんだもん。

記憶を思い出して、コウくん達と戦うって。


人間達だって、悪い人ばかりじゃない。

優しい人も、たくさんいる……」



そう言うと、玉藻は苦笑したように目を細めた。



「あなた、御津恒一が好きなのね?」



ざわ、と胸に波がたつ。


どうして?


私達の事なんか、あまり知らないはずなのに。


どうして、そんな事を思うの?



「悪いけどねー、はたから見てたらバレバレよ。

気づいてないのは、本人だけなんじゃない?」



かぁ、と頬に血がのぼる。


私の気持ち、バレバレなの?


もしかして、雅や健ちゃんにも?



「か、関係ないでしょ……」


「あるわ。大アリよ。

彼が好きだから人間の味方をしてるんなら、今すぐやめた方がいい」


「な……っ」



哀れみを浮かべたような玉藻から、目が離せない。


この人の言うことに、惑わされちゃいけないのに……。


何も反論できないでいると。


玉藻は、ゆっくり口を開いた。


その毒々しい赤い唇から、雨の雫が1つ、落ちる。


信じたくない、言葉と一緒に……。



「あなたは、三剣士に利用されているのよ」