「精霊達は、人間に失望したの。
木を伐り、森を焼き、山を穴だらけにした人間達をね。
これを見て」
差し出された玉藻の手の平に、フワリと透明の球が浮かぶ。
私は術にかけられないように注意しながら、それをのぞいた。
「なに、これ……」
そこには、信じられないものが次々に映し出された。
こののんびりした土地からは見えないものを。
鉄の建物が並ぶ町には、緑がほとんどない。
カラスがつつく、巨大なゴミの山。
黒い煙が吐き出される空。
玉虫色の油が浮いている川。
「これが……この国の今の姿……」
「この国だけじゃないわ。
この星全体が、悲鳴をあげてるの」
のぞいた玉の中に、それこそ見た事もない悪夢のような光景が、浮かんでは消える。
広がる砂漠。
最新兵器を使った戦争。
先進国に搾取され続ける、痩せた人々。
溶けていく氷山。
「これが、今まで人間が生きてきて、
人間の利益だけを考えてきた結果よ。
精霊は消滅し、動物も植物も、幾千もの種類が絶滅した」
「…………」
私は、その玉から目を背けた。
もう、見てはいられなかった。
技術の革新が恐ろしいほど進んだ事はわかっていたけど、まさかこれほど……。
これほど、自然や精霊が、犠牲になっていたなんて……。



