「まさか、そろっているとはな……手間が省けた」
低い声が響く。
「渚、結界を」
「はいっ」
こんなところを一般人が見たら、卒倒してしまう。
渚はうなずくと、両手を合わせ、『いただきます』のポーズをする。
みるみるうち、手の平から青い光が漏れ始め……。
その両手が開かれる。
そこから、青い光がドーム状に広がった。
光は壁を、天井をすり抜け、建物全体を覆ったようだ。
もちろん、常人の目には見えないだろう。
「ふぅ~」
「よし、よくやった」
渚はやりきった顔で、ぷはーと息をはいた。
これで、ここは他人には普通の体育館にしか見えない。
「ほぅ。お前の結界より、精度が良いな。
キメが細かい」
「きーっ、何よ!
お肌のキメは私の方が……」
玉藻が渚をにらむ。
その陶器のような肌を認め、ぐぐぐと奥歯を噛んだ。
「と、とにかく、あんた生意気なのよ!
一体何者なの!?」
「ふえっ」
息を荒くした玉藻に、渚が一瞬ビビる。
「それより、お前達の目的を聞かせろ」
さすが、雅。
俺は黙って、
『善女竜王です』
とうっかり話しそうになってしまった渚の口をふさいだ。
渚はふがふが言いながら、手足をバタつかせた。



