「電話してみる」
俺がスマホを取り出すと、渚が目をキラキラさせた。
「……さわりたいのか?」
「うん!」
スマホを渡された渚は、細い指で器用にそれを操作した。
こんな田舎でも、一応電波は通っている。
思えば買い物だって、あんなスーパーに行く事なかったんだ。
ネットで何でも買える時代なんだし。
ばあちゃんにはそんな考えないんだもんな……俺が早く気づけばよかったな。
俺はそんな事を、ぼんやり考えていた。
「出ないか?」
なかなか話し始めない渚に、雅が声をかける。
「うん……」
「しょうがないな、メールだけして先に帰るか」
渚からスマホを受け取ろうとした瞬間。
お互いの手に、電流が走った。
「っ!」
カツン、とスマホが床に落ちる。
「どうした?」
雅がそれを拾う。
しかし、彼は何も感じないようだ。



