いまいましい。
殴りたくなる衝動に駆られるものの、四季に傷をつけるわけにも行かず、忍は晴を睨み返すと、歩き出した。
「あ、ねぇ、僕と話しなくていいのー?四季がどうなったか心配なんでしょー?」
晴の声が追ってくるが、こんなまともではない遣り口を使う人間が正直な話をするとも思えない。
忍は走り出した。
由貴のところに行かなければ。由貴の家──何処だろう。
忍は携帯を取り出すと、由貴の携帯にかける。
由貴はすぐにとってくれた。
『はい。忍?』
「由貴。家何処?わからないの。教えて」
『え?四季と一緒なんじゃないの?』
「一緒…だった。ついさっきまで」
『どういうことなの?』
「四季が消えた。目の前で」
『消えた?』
「そういう話、されると困るんだよねぇ」
いつのまに先回りしたのか、晴が忍の前に立ちはだかった。
「せっかく、僕が四季になった意味ないじゃない?」
動けない。
変な呪術にでもかけられたかのようだった。
晴は忍の携帯をすっと取り上げると、勝手に携帯の向こうの由貴と話し始めた。
「ああ、由貴?ごめん。忍が変なこと言ってるんだけど、気にしないで。僕は無事だから」
四季の声でそう語り、由貴は一瞬沈黙した。
『──。四季じゃないよね?』
「え?」
『忍があんなに切羽詰まった話し方してるのに、四季が忍のこと全然心配してない感じがするなんておかしい。さっきまで四季、忍のことすごく心配してた』
晴は心の中で舌打ちする。
騙せないのか。心の目は。
それでも、はい実は違います、と素直に答えてやる気も晴にはなかった。
「変なことが起こっているから、由貴も動揺しているんじゃない?僕に『四季じゃないよね』なんて」
『……』
携帯の向こうで、何やら話している声がする。
別の声が電話に出た。
『四季?忍だけど』
意表をつかれたのか、晴の表情に動揺が走る。
確かに揺葉忍の声だ。
すると、ここにいる揺葉忍はいったい何だ?
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