不思議電波塔




 四季の滅多に見られない表情に晴は嬉々とした。

「あは。やっぱり四季だったら怒るよねぇ。傍目にも由貴のこと大事にしてるってわかるしね」

「──何が目的?」

 四季は落ち着き払った声で切り返した。晴はそう問われるのを待っていたかのように、愉しげに答えた。

「僕も僕の物語を書けないかなぁと思ってさ。でも由貴の小説、こっそり読んでみたんだけど、笑っちゃうくらい素敵だね。ああ、由貴らしいなぁって感じでさ。ひとりで書くのもなんだし、由貴と一緒に書こうかなぁなんて考えて。そっちのが絶対楽しいし。それでものは相談なんだけど、四季、由貴の小説の挿し絵、降りてくんない?僕、四季みたいな絵は描けないけど、比較になんないくらいリアルですごい絵、描けると思うんだよねぇ」

 ふざけた口利きもここまでくると、ある種の迫力がある。

 そうする自信があるのか、はったりなのかはわからないが──。

「断る」

 四季は言い返した。

 晴は残念そうに肩をすくめる。

「だよね。そう言うと思ったよ。あー何かやっぱ四季がいると面倒い。ホントは由貴本人のがいいかなーって思ってたんだけど、四季でいいや。面白そうだし」

 言うやいなや四季に向かって拳を振り上げた。

 それに反応して四季の手が晴の腕を掴む。

「反応は悪くないね」

 ニッと晴が笑う。

「ピアノ弾いてるからかな?でもねぇ、手、痛めない?ピアノ弾けなくなったら困るんじゃない?」

「黙って殴られる理由もない」

「つまんないの。いいや。四季傷んだら、困るの僕だし。じゃ、消えてー」

 ふっと四季の輪郭がブレて、消滅した。

 否、晴の身体に吸収されるように見えた。

 やがてそこには『四季』の姿になった『晴』が立っていた。

 一部始終を目の当たりにしていた忍は呆然と立ち尽くしている。

「あは。ごめんねー。揺葉さん。僕、四季になっちゃったー。よろしく」

「──四季はどうなったの」

 忍は沸点通り越した声音で尋ねる。

「どうなったの!!」

「…怖。はいはい。四季ですかー。とりあえず姿が生きてるってことは、無事ですよ。あ、僕のことは殴らない方がいいよ。殴ったら本体の四季の方に傷がついちゃうからねー。あはは」