不思議電波塔




 四季は携帯を閉じると、忍を見た。

「忍、今から由貴のところ行こう。変なことが起こっているみたい」

「変なことって?」

「由貴、忍が変な声を聴かなかったか訊いてきた。それをなぜ由貴が知っているのかという時点で、変じゃない?」

「──。確かに変ね」

 忍も真摯な表情になる。

「忍、気分は悪くないよね?由貴のところ行ってもいい?」

「大丈夫。気分が悪かったのは声が聴こえている間だけだったから」

 四季と忍が会話しているそばで、話しかけてくる声がした。

「あれ、四季に揺葉さん」

 尾形晴だった。

「仲いいね。絵になるし。ちょっと妬けるくらい」

 口元だけで少し笑う。

 音楽科の忍は尾形晴とは同じクラスになったことがないので、ほとんどわからない。社交辞令として軽く会釈した。

 四季は持ち前の人当たりの良さで明るく返した。

「ありがとう。…何か用?」

 クラスメイトではあるが、四季と尾形晴とは普段はあまり話さない。仲が悪いというわけではなく、接点がないからなのだが。

 晴はシニカルに言葉を返す。

「何か用?って、用がなければ話しかけちゃいけないの?」

 ややトゲのある言い様だった。

「あは。ちょっとムカついた?冗談だよ。…まあ、用はあって話しかけたんだけどさ」

「何?」

「由貴、小説も書けるんだね。すごいよね。僕なんか何てゆーの?『取り柄』ないからさー。『何でも出来るのに何をしたいのかがわからないとか、そんなことで悩む余裕があるなんて、すごいね。そんなに出来ると身動き取れなくて、何も出来ないでしょう』って言ったんだよね。由貴に。そしたら由貴傷ついてたんだ?そういう顔してたもんねー。何てゆーか、繊細で大変だね」

 良心の呵責という言葉のカケラもない雰囲気だった。

 こんなことをわざわざ自ら明かしにくる人間の気が知れない。

 四季の表情が明らかに怒っているのを見て、忍が冷静に横から止めた。

「四季。気にしちゃだめ。行こう」