不思議電波塔




 不思議電波塔の最上階の一室で眠っていたフェロウは、カタカタカタと勝手に文字を打ち始めるタイプライターの音に起きてしまった。

 何処から来る指令なのかは不明だが、このタイプライターから下る任務をこなすのがフェロウとシェネアムーンの仕事だ。

「──ああ…はいはい。眠いな」

 のろのろと起き出して、タイプライターの前に来る。

 たった今送られてきた文面を見て首を傾げる。

『作品15。チョコレート人形。時空の歪みを正す調停役。チョコレート人形を起動させること』

 いつものことながら、意味不明な任務内容である。

 フェロウは文面を声に出して読み上げた。

「任務了解」

 すると──フェロウの目の前に端正な顔立ちの黒髪の少女が立っていた。

 高校生らしい制服に身を包んでいる。

「──おい。チョコレート人形って…これは普通の人間じゃないのか?」

 少女の目がフェロウを見た。

「あなたじゃない」

「──は?」

「『僕』を探しに行く」

 少女はフェロウが話しかけただけで起動し、すたすたと歩き始めた。

「おい!おま…っちょっと待て!」

 フェロウが少女の腕を掴むと、少女とは思えない力でフェロウは投げ飛ばされた。

「いってぇ…」

 フェロウは任務柄こういう危険なことには多少は慣れている。とっさに受け身を取り怪我は免れるが、思いがけない少女の力に驚かされていた。

「…ぼくに近づくとこうなる」

 少女は冷静な表情でそう語る。

 フェロウは顔をしかめながら訊いた。

「頑丈そうなチョコレート人形だな。俺はフェロウ。とりあえずお前の敵じゃない。お前の名前は?」

「揺葉忍」

 名前を言い、少女はくるりと背を向けた。

「あ…おい!だから待てって!」

「ぼくは探さなければならない。もう行く」

 何度も投げ飛ばされてはかなわない。少女に触るわけにも行かず、フェロウは舌打ちする。

 何かあったら、シェネアムーンに連絡しなければいけないのだが──。

「ああ、仕方ねぇ!」

 こんな物騒なものを放っておくわけにもいかない。

 フェロウはチョコレート人形『揺葉忍』の後を追った。



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