由貴と涼が机の前に立ち尽くしていると、ふと、少女の柔らかい声がした。
「──失礼いたします。初めまして。綾川由貴さん」
冬らしいコートの前で行儀よく両手を組み、ブーツを履いた両足はきちんと揃えている。
ブーツを履いたまま室内にいる、という状況が、この少女が真っ当ではない経路からこの部屋を訪れたのではいか、ということを匂わせた。
「余計なやりとりは抜きにして、単刀直入にお話いたします。私はシェネアムーン。時空管理人です。由貴さん、あなたの書いているお話に何者かの意思が絡もうとしています。私は混乱になる前にと思い、由貴さんが不必要に心を騒がせないようにとこうしてお話に参りました」
「……。時空管理人?」
由貴はやはり訝しむような問いかけ方になるが、少女が真っ直ぐに目を見て話してくるため、シェネアムーンが懸念していたほどの疑いの念は持たれなかったようだった。
「はい。時空管理人とはそのままの意味です。由貴さん、あなたの書いている小説は2次元。由貴さんのいる世界は3次元。…そうですよね?」
「うん」
「由貴さんの書く小説に介入しようとする者が、次元を混乱させたがる者である可能性があるのです」

