「にに荷物は大丈夫!これくらい自分で持てるから」

「…じゃあ、言い方変える。僕が持ちたいから、貸して?」


…そんなに甘やかさないでよ。

そう言いたい。

だけど、今の私にそれは言えない。

付き合い始めてたった10日。

蒼くんが好きだから、嫌われたくないから…本音を隠す。

告白されて、付き合い始めて、“何かが違う”と別れを切り出されるのは…もういやだ…



「…――樹が疲れてないなら、どこかで飯、食べない?」

「…うん」

「にいちゃんのこと、気になる?」

「え……」

「そんな顔してるから」


じっと私を見つめる蒼くんの目が痛い。


「き、気になんて…」

「うそついちゃダメ。気になりますーって顔に書いてあるよ」

「うそっ!」


どこどこ?なんて頬をペタペタと触っていたら、繋いだ手とは反対の手が延びてきて、


「ここ……」


そっと私の頬を撫でた。


涼さんのような武骨な男の手とは違って、蒼くんの手は陶器のように滑らかで、ひんやりと冷たかった。


ど……どうしたらいいの……?

心臓……ドキドキしすぎて……どうにかなりそう……