珈琲の香り

でも……

変に気まずくても嫌だし。

これでよかったのかも……


「おはようございます!」


私は気合いを入れて一歩を踏み出した。



…………つもりが、躓いた……………。

もうっ!こんな履き慣れない靴なんて履かせるからっ!


「道に穴、開けんなよ」


みっ、見られてたー!!

涼さん、さっさと中に入ったとばっかり思ってたのにー!


「穴なんて開けませんっ!コンクリに穴開けるほど重くないですからっ!」

「そんな格好してるからだろう。店ではコケるなよ。」


まったく……失礼な人!



「ムカつくっ!」


ボソッと呟いた一言が聞こえていたのか、涼さんがジロッとこっちを振り向いたー!!

やっ、ヤバイっ!

とりあえず知らんふりして……

そそくさと店の中に入る。

たった1週間顔を出さなかっただけなのに、すごく懐かしい気がする。

涼さんの焙煎した豆とクッキーがカウンターに並ぶ。

そこには……


「あ………」


私用だと涼さんが用意してくれたマグカップが一緒に並んでいた。

カップからのぞくクリーム。

これって……


「カフェモカ……」


たった一度、何となく話した『カフェモカが飲みたい』という言葉。

それを涼さんは覚えていてくれたんだ。