満月が注ぐ城のテラス。涼やかな風が頬を撫で、宴の酔いを醒ましてゆく。

背中の硝子の向こうでは戦勝の熱気覚めやらぬ貴族たちが美酒を煽り、この国を勝利に導いた英雄を讃えていた。

先の戦の勝利に加え、隣国との血縁関係を結べばこの国の平和はより確かなものとなる。
王女の婚約は既に決まり、後は挙式を待つだけだ。

私の瞳が映すのは、亭々皎々とした光の中に佇む軍服の後姿。
皺一つない厚手の生地は均整の取れた長身の首から下をくまなく包み、それでいて覆い隠された身体をきれいになぞる。

広い肩から優美な曲線を描いて下る腰のラインは革のベルトにとめられて、よりくっきりと艶やかなシルエットが浮かび上がっていた。

その背姿に思わず吸い寄せられて歩が進む。カツンと響く靴音に、ラインが揺らめき鎖が光る。
視線を上げると唯一露出した肌と、愁いを帯びた双眸が、私の心を撃ち抜いた。