君の声がききたい

ぁ………


奏が入り口の手間で、イヤホンを耳に差しているのが見えた。

奏は携帯を片手に、本屋から出てくる…




ぎゅっ


「っ!」


本屋から出てきた奏に、驚かすように抱きつく私。

奏はびっくりして私を見たあと、イヤホンを外した。



――『なんだお前…来てたのか?今、お前にメールしようと思ってたとこ』

――『えへへ♪待ちきれなくて来ちゃった!』


奏の手を握る私。




――『飯は?なんか食ってく?』

――『作ってきたよー』

――『マジで。じゃあ帰るか…』


奏はそう言って、私の手を引いて歩き出す…

駅前から少し歩くと、人気のない暗い道に差し掛かり、歩いているのは私と奏だけになった。




――『お前、ひとりで来たの…?』




ゆっくり頷く私。



――『この道暗いから、危ないだろ。』

――『…平気だよ。もう何回も歩いたことあるもん』

――『いや危ねえ。もー迎えに来なくていいから』


ガーンΣ!

奏のその言葉に、ショックを隠せない私…



なにさなにさっ

ちょっとは“迎えに来てくれて嬉しいよ”くらい言いなさいよ!


せっかく新しい服着て、ネイルまでやったのに…

全然触れてくれないし(涙)