君の声がききたい

恵里佳が食堂の入り口で俺を呼ぶ。




「悪り。先行ってて…」

「早くね〜」

「うん」


先に廊下で待っている、修也と美穂の元へ走っていく恵里佳。

俺はカバンを持ち、飲みかけの缶コーヒーを手に持ちながら、食堂の窓側の席に座っている女に近づいた…

女の近くまで来ると、その子に気付かれないように顔を覗き込む。




・・・やっぱり…

昨日のあの子だ……


窓側に座っていたのは、
昨日携帯を落とした、耳が聞こえないあの子だった…

その子は窓の外を眺めながら、ひとりで昼メシを食っていた。




「……あの‥ぁ。」


そうだった。

声かけても、聞こえないんだよな。


俺はその子の向の席が空いていたので、その席に近づき…その子に軽く手を振った。





「………!」


俺が手を振ると俺の存在に気づいたその子は、ちょっと肩をビクッとさせた…




「よぉ。えっと……昨日・・・・…」


だから。(汗)

言ってもわかんないんだってば。




ガザガサガサ……




俺が戸惑っていると、その子は昨日みたいにカバンからノートとペンを出した。