萌絵に話しかけた男は
武士のようだった。
しかしかなり
傷を負っていて
疲れきってるようだ。
「へへ…
ちょうど良かったぜ…
オレぁ腹減ってんだよ。
この戦ももう1週間も
続いてる。
村の奴が何で
こんなとこにいんのかは
知らねえが…
なあ、なんか
持ってんだろ?
なあに、戦の相手は
あんたの国だが、
食い物さえくれりゃ
あんたには手出しは
しねえからよ。
なあ、早くなんか
食わせてくれや」
もちろん食料など
何も持っていない
萌絵は目に涙を溜めて
必死で首を振ることしか
できなかった。
足はガクガクと
震えていた。
怖かったのだ。
脳裏には先ほど
槍で刺された武士の様子が
しっかりと刻まれていた。

