桐生の痛みを知っているからこそ… 言えないこともある。 言わなくちゃならないことがある。 大切な二人の幸せを願う、これが精一杯の言葉なんだ。 「うん…」 来栖の瞳から再び大粒の涙が零れる。 切なそうな笑顔の裏で来栖は今…何を考えてる? その心に触れる度…何かが壊れていく気がして… 桐生の留学に隠された裏を俺はどうしても伝えられない。 ごめん、来栖… 桐生の事をどうか信じてやってほしい。 二人の進む道に待ち受ける困難を… どうか乗り越えてほしい。 そう願いながら来栖の頭を撫でた。