「福田陽菜さん、有名よ。入学式で挨拶もしていたでしょ?」

「・・・ええ」

「でも、それだけで、じゃないけど」



 言葉の裏に、はっきりとした棘を感じた。

 彼女はゆっくりと腕を組んだ。

 それから、値踏みでもするかのように、上から下へと視線を動かして、私を眺めた。



 ・・・なんとなく・・・ううん、やっぱり・・・初対面で、まだ、名前も知らない相手にそういう態度をとられると、腹が立ってくる。

 なんだか、つま先から頭のてっぺんまで、一気に血が上りそう。

 自分でもめったに怒らないって自覚があるのに・・・どうしてだろう。

 今日の私は、なんだか、簡単に、怒ることができる・・・そんな気がする。

 でも、がまんっ、がまんと、まだ、私の中に残っている正気なところが頭の中でささやく。

 初対面の人と、喧嘩しちゃって、どうするの!? おちついて、私。

 話し合いは、冷静に、穏やかに、感情を高ぶらせてはだめ。

 頭の中でぐるぐるいろいろなことを考えて、だまったままの私を、さらにわざと挑発するかのように、彼女がさらに言葉をつづけた。