雨音がする。

 赤い傘に、大粒の雨があたって、はじく音。

 六月、梅雨入り。

 公園の花壇では、薄紫色の、アジサイの花がしっとりとぬれている。



「・・・」



 腕時計に目を落とす。

 もう少し、あと三分だけ待とう。と思っていた時間から、すでに五分経過。

 かなり急がないと、電車に間に合わなくなる。

 私は公園の向こうに建つマンションに目をやった。

 そこから走ってくる人影はない。

 今日で三日目だ。



 彼はこない。



 いつもは私が来るより先に、公園の入り口のところで待っていてくれてるのに。

 どうしたんだろう?

 気になる。

 携帯のアドレス聞いておけばよかった。でも、携帯持っているかも知らない。



「いかなきゃ、ね」



 私は、歩き出した。

 もう少し待ったら、もしかしたら・・・と後ろ髪引かれる気持ちもあるけれど、これ以上電車を遅らせたら、完全に遅刻だ。