それは聡が小夜の頬を叩いた音だった。
「いい加減にしなさい、小夜!命を助けてもらったのにその言い方はないでしょう!?」
いつもは温和な聡。
だから、怒っているのを見たのは美桜里も小夜も初めてだった。
聡は美桜里の方を見ると、袖を彼女の額に当てた。
理由は分かってる。
当たった破片で頭を切ったらしく、血が出ているからだ。
「お祖母様、離して」
美桜里は聡の手を払うと、その場に立ち上がった。
そして、そのままその場を去ったが、少し離れた所で足を止めた。
「何故、小夜を守ったんだろうな…」
憎い相手のはずなのに、気付いた時には小夜を庇っていた。
その理由は自分でも分からなかった。
美桜里はそんな疑問を抱えたまま、再び歩き出した。



