気づけば海水が臍の辺りをとっくに越えていた。鬼だ、鬼がいる。 ここで溺れたら、絶対に死ぬ。 もしも今日無事に家に帰れたら、高いシュークリーム買って帰ろう。 心にそう決めた。 「そんな簡単に溺れないから。泣くなよ。」 腕を掴まれて、首に回させられた。向かい合って、しかも私が抱きついている格好になる。 有岡って、本当に均整の取れた筋肉の付き方をしている。そこら辺の男より、綺麗だ。 顔も綺麗だし。 ぼんやりと見つめていると、顔が近づいて、唇が重なった。リップ音を立てて、離れていく。