由香?

遠坂のことか?


『いう…な…ゆ…か』


無表情の仮面。


俺はそれが…

泣いているように見えたんだ。


『つみは…せお…う…』


どんな罪を指しているのかは判らないけれど。

どうしてこうなっているのか判らないけれど。



『ゆ……か…には…』



遠坂に知られたくない為に。


だから久遠を遠ざけ、

俺にも…接することを惑っていたのか。


遠坂榊がこんな姿になったのだと、

遠坂を哀しませたくないために。



「判っ…た。言わ…ない」



『ゆ……か…は…いま…』



榊は俺を見ている。


「……元気…だ。遠坂は…元気で頑…張っ…ている!!!」


すると榊は――

軽く頷いて。


『ゆか…たの…む』


それは榊の声にならない声。

他人に託すことに対して、悔しさを滲ませたような…そんな声に聞こえた。


俺の耳と言うより心が。


――約束、して欲しいんだ。


俺に共鳴したから。


だから俺は――


「判っ…た…。安心…しろ…」


俺の言葉に、榊は――

笑った気がしたんだ。