玲の体調は万全ではなく、力が使えないのなら。


此処からでは芹霞と玲の元には追いつかない。

全速力で走ったとしても、全て"事の後"。


無事でも…無事でなくとも。


俺は…役に立てないことには変わらない。

運命に、全てを託すことには変わらない。


久遠とて…間に合わない。


久遠は布陣を使った言霊使い。

例え遠隔操作ができる力があっても、言霊の発動には詠唱の時間がいる。


長々と待機姿勢でいる時間はなく。


瞬間移動のように――

僅かな時間に大幅に移動せねば、2人を助けられない…それが現状。


ならば。


サセルモノカ。


俺は――


シナセルモノカ!!



「馬鹿か!!! 力を使うな!!!!」


前方で久遠が怒鳴った。


…使うなだって!!!?


こんな緊急時に使えない力など、俺にはいらない!!!


オレガイルノニ!!!


俺が正に風の力を発動しようとした瞬間、ありえない気配に集中力を乱された。



同時に、久遠の動きが止って。


「お前はせりの元に行け!!!」


久遠は前方を睨み付け、身構えた。



そう前方に――

まるで予告無しに、

突如そいつは現われたんだ。


こちらが気配を感じる前に。


不気味な仮面を被った――

黄色い…外套男。