店内、鳴り響く電話。
スタジオから走り出て、電話応対する店員達。
「おぉ、凄いですねえ。
お問い合わせ電話殺到!!?」
茶化すようなアズサの声。
まるで何処かのテレフォンショッピング状態。
生中継は続けども、主役の座は…店舗にて饒舌に服の説明をする店長にある。
呉羽チーフがその他ドレスを抱えて出て行き、店長の話に宣伝を織り込ませる。
スタジオには、あたしと玲くんだけがポツン…。
…別に目立ちたかったわけでもないけれど…。
完全拍子抜け状態。
あたしはお芝居の出演者なのか、観劇者なのか。
よく判らないまま、舞台の袖に退場気分。
「凄い反響だね」
にこにこほっこり玲くんは、いつも通りだ。
余裕すら窺える。
あの可愛い玲くんは何処へやら。
何だか寂しいあたし。
その時、耳に…慣れたばかりの曲が聞こえてきて。
「玲くん…これ、
Zodiacの…新曲、"ドラゴンヘッド"じゃない!!?」
黄色い蝶が来る!!!?
顔色を変えたあたしとは対照的に、
「今気づいたの? 結構前から、桜から受け取ったあのCDを、ビル全体に流して貰ってたんだけれど…大丈夫そうだね」
CDを入れた鞄は、このスタジオの角に放られたまま。
CDを抜いて玲くんが出ていったことすら、まるで気づかなかったあたし。
玲くんの器用さは、こんなコトにも役立つらしい。
凄いな、玲くん。
色々な職業につけるね。
今の此の不況なご時世…玲くんみたいに何でも出来て、何にでも臨機応変に対応る人が生き残れる…って、待て待て。
今考えるべきコトは、玲くんの未来ではなく…
「ねえ…じゃあZodiacと黄色い蝶は、無関係だったの!!?」

