その時――
機械から電子音が鳴り響いて。
俺は、久遠に背を向け…深呼吸を数回繰り返して心を落ち着かせた。
俺が今すべきことは…俺の恋心を訴えて喧嘩することではない。
「氷皇から貰ったデータの暗号化解除が終わったようだね」
そして遠坂は、キーボードを叩いて大画面を切り換える。
「これは…『TIARA』のデータの方だね」
画面には0と1の羅列。
それを遠坂がキーを叩いて、原語に戻す。
「英語になった方が、ボク理解できないや」
苦笑した遠坂。
英語…じゃない、これは。
「ラテン語…が所々混ざってるな」
久遠の言葉に同感だった。
ちらりと見た時は、英語だと思っていたが…諸所にラテン語の単語がある。
何かを隠喩しているのか、それともたまたまなのか。
前半の検査結果数値らしきものは飛ばし、後半の文章を中心に見ることになった。
文法は、英語ラテン語入り混ざり、統一されていないようだ。
読みにくい上――
長い。長すぎる。
画面を上下に動かすスクロールボタンが、見る見る間に細くなっていく。
英語とラテン語の混在文章を訳せないわけではないけれど、これでは…。
「時間がかかりすぎる」
久遠の呟きとほぼ同時に、俺は手元のパソコンのキーボードを叩き、
『頻度が高い名詞を検索させろ』
俺は、そう打込んだ画面を遠坂に見せる。
「単語ピックアップね、OK」
カタカタカタ…。
"Rei Shidou"
まず上がったのは…玲の名前。
玲が一体何に関係してる?
そして…
"EMP"

