暖房機の前の席に座らせても、芹霞の体温が戻らない。
益々冷たくなっているように思えて、さすがに僕は奇妙に思った。
芹霞の多くなる欠伸。
頻度が高くなる欠伸は、生欠伸と化したようだ。
生欠伸の多発は、身体の異常を訴えていることが多い。
僕は芹霞の手首の脈をとってみた。
「遅すぎる…」
1分に40前後じゃないだろうか。
また芹霞が欠伸をした。
この欠伸…僕は、僕に対する失意の為に出たものだと思ったけれど…違うんじゃないだろうか。
低温度による…睡眠?
まさか…!!
だって此処はそこまで寒くはない。
寧ろ…僕は汗ばんできている。
だけど芹霞の目は微睡んできていて。
繰り返される欠伸と…
「玲くん、何か…痒い。何か虫でもさされちゃったかな。何か出来てる?」
先刻からしきりに掻いている首筋を僕に見せた。
「!!!?」
まさかね。
あるはずがない。
血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)なんて。
僕の見間違い。
これは芹霞がおかしな掻き方をしたせいだ。
指の腹で芹霞の肌を触ってみたけれど…特に違和感はない。
すべすべとした肌のまま。
「何でもないのに…何で痒いんだろう」
蕁麻疹…だろうか。
僕への拒絶感?
またもや心臓が不穏な音をたてる。
「芹霞、ちょっと歩こう」
このままだと芹霞が寝てしまいそうだ。
眠らせるなと、僕の本能が言っていた。

