今日の貸切って…Zodiacのライブの為だったんだ。
なんかやだ、このZodiacの曲。
鳥肌が立ってくる。
本能的な拒絶感がある。
「俺は…したいようにする」
身体が悪寒のように、ざわざわとする。
流れる曲が、耳障りで仕方が無い。
「ただそれだけだ」
そう言い捨て、去っていく久涅。
何が言いたいのか判らないけれど、こんな中にあたしを置いていかないでよ。
「待って、待ってよ……」
思わず引き止めようとしたら、玲くんが振り返らずに手であたしを制した。
「行かせないよ」
怖い。
玲くん凄く怖い。
あたし…
黙って出てきたから、ご立腹なんだ。
「ねえ…"同棲"って何」
抑揚のない声で。
「君は…僕に黙って――
何処に行こうとしてるの?」
くるりと、玲くんがこちらを向いた。
優しさを無くした…
冷たい鳶色の瞳。
"買って上げるから"
条件反射のように蘇り、胸が痛い。
やだな。
"お試し"の最後がこんなんじゃ嫌だ。
そんな時。
「玲」
久涅が振り返り、
「欲しいならやる。
しがない"貰い物"だ」
ぱしりと投げつけたのは…
「何れ錆びる安物は、"成り上がり"にぴったりだろう。せいぜい大切にしろよ、シンデレラのオウジサマ」
あたしからの――
玲くんへのプレゼント。

