「ドラゴンヘッド?」


龍の…頭?


「は、はい…。Zodiac…っていうバンド、知ってますか?」


私は思い切り顔を顰めたと思う。


どうして今、その忌まわしい名前が出てくるのか。


「3人組の人気のミュージシャンなんですけれど、その新曲が『ドラゴンヘッド』。PVにもCDジャケットにも、その記号が多く使われているんです」


そうして鞄の中から見せてくれたのはCD。


一面に、同じ記号が描かれ、その中を…金色の龍が漂っている。


「彼らは、ひと時落ち目だったんですが、最近またパワーアップして、神秘さが増して大人気なんですよ。今、東京でゲリラライブツアーしている噂があって、何処かで目にすることがあるかもしれませんね。

CDよければ…どうぞ、お礼に差し上げます」


正直、いらない。

触れたくもないし、視界にも入れたくない。


ゲリラライブ。


もしかして…私達への腹いせか?


Zodiac。


私の脳裏に…遠くはない過去が思い浮かぶ。


櫂様と玲様と馬鹿蜜柑と私で、歌い演奏しまくった桐夏の学園祭。


芹霞さんが夢中になったZodiacが、学園継いでシークレットライブをするからという理由で、それを潰して見せようと…櫂様の提案で行ったゲリラライブ。


数時間の練習で敢行され、初めて楽器というものを演奏し、歌まで歌ったあの時。


楽しかったあの時間。

1つとなって皆で楽しんだあの時間。


今は…その時間は流れていない。