身体の奥底に、滾る何かを感じて…それが熱くて熱くてあたしは身を捩った。


息苦しい。


息が…出来ない!!?


まるで水槽から上がった金魚のように、口をぱくぱくさせてみたけれど、酸素が体内に入ってこない。


焦れば焦るほど、息の仕方が判らなくなってきて。


苦しくて。

身体が痺れて。

手足が冷たくなってきて。


崩れ落ちそうになるあたしを、後ろから支えたのは――


「小娘!!! いいか、深呼吸をしろ!!! ゆっくり、ああ、そうだ。もう1回!! ふぅ…何とか、過呼吸は収まったな」


久涅で。



「"拒絶"だな…これは」



続けて、よく判らない言葉が続いた。



「形勢逆転と言う処か。


どうだ、なかったことにされる気分は。

――義弟よ」


後ろから、被さるように久涅があたしを抱きしめた。


豹柄の腕が、あたしのお腹あたりで組まれる。


その手が微かに震えているように感じたのは気のせいだろうか。

…震えているのは、本当に久涅なんだろうか。



「お前の時代は終わったんだ。

お前は…この舞台から去れ」


久涅の低い声。


紫堂櫂は…睨み付けるでもなく、ただ哀しそうな目をしたまま、ゆっくりと頭を横に振った。



「生涯の…恋だ…。

これだけは…降りない」



そして涙で潤んだ熱い目をあたしに寄越す。



「12年間…想い…続けてきた…」



どうして――

こんなに苦しくなるの?


どうしてこんなに切なくなるの?


どうして…この瞳を見たことがあると思ってしまうの?


錯覚、なのに。

流されているだけなのに!!!



「ずっと…お前だけ…なんだ」



彼は…あたしを誰かと勘違いしてるんじゃないだろうか。

あたしは、彼を知らないのに。



ホントウニ?




「俺の…永遠…だ」




――…ちゃあああん!!!



ずっきぃぃぃん。


途端に頭に痛みが走り、


よろけたあたしを…また久涅が支えてくれた。