どうして…こうなってしまったんだろう。


"約束の地(カナン)"に来てから――

芹霞の態度が変わってしまった。


僕の不安どおりに…状況が進んでいる。


――紫堂櫂を愛してる!!


櫂と何を話したの?

櫂を見て何を思ったの?


今…

君の中での僕は、どんな存在なの?


僕の告白は――

君の心の中に残っているの?


僕を…消さないで。

僕を…忘れないで。


ねえ…僕はずっと傍に居たんだよ?


「………ぃ…」


櫂ではなく…

僕と一緒に…居たんだよ?


僕を…見てよ。


「……れ…ぃ…」


櫂の声が向けられた。

何度か呼ばれていたらしい。


目の前に居て呼ばれていたのに…

気づかないなんて。


少し、声が回復したのか。



「風呂…入って…くる…」



僕は――

その言葉を深く考えていなかった。


苦笑した櫂が見せた片腕は、僕を黄色い外套男から守る為に傷つけられたままで。


血がこびり付いていた。


洗い流さないと大変で。



そして――


櫂が芹霞の視界から居なくなれば、

少しでも僕の心は落ち着くのではないかと…


そんな…自分勝手なことを思っていて。



僕は切羽詰まっている櫂の心なんて、

まるで感じる余裕もなかったんだ。



「判った。ゆっくりしてきてね」



判っていなかったんだ。



櫂の――


男に戻ろうという覚悟なんて。


それがどんなに僕を苛ませる結果になるかなんて…何1つ。