「誰もいねぇな」
「……」
保健室の扉を閉めてしまえば、そこはまた二人だけの空間だった。
窓の外に生徒たちが騒いでいるのが見えるけれど、きっとこちらには気付かないだろう……。
祐斗はあたしをソファーに座らせ、勝手に棚を漁り、包帯を見つけて戻ってきた。
上履きと靴下を脱がされ、慣れた手つきで右足にくるくると包帯を巻かれていく。
祐斗がこういうケガや捻挫の対応にある程度慣れているのは知っている。
だってアイツら……下っ端たちがよくケガして戻ってきてるのを呆れた顔しながらも手当することがあるから。
慣れているのは知っていたけれど……何というか、問題はそうじゃない。
自分に跪いているような体勢で片足をいじられているというのが何とも言えないというか……ちょ、スカートの中見えてないでしょうね?
なにより無言なのが耐えられない。
そうこう頭の中で文句を言っているうちに手当?は終わっていた。
ケガなんてしてないのに、変な感じ。
「さて、終わったけど」
「……」
「見惚れてた?」
「バカじゃねぇの!!??」
こいつあたしが見惚れてると思いながら包帯くるくるしてたわけ!?
そのまま勢いで祐斗の頭を蹴るも、この近距離で大した力も出るはずもなく、あっさり受け止められていた。
「うざっ」
「どうとでも。女王様」
祐斗の憎たらしい口調はこの二人の空間だけのもの。
ニヤリとしたいたずらな笑みに、また心臓が跳ねた。



