抵抗もできないまま、そのまま音楽室を出て保健室へ向かう。
祐斗は人の少ないルートを選んで歩いてくれているようだけれど、それはやっぱり0ではなくて……姫抱きされているあたしたちには視線がグサグサと刺さってきていた。
むしろいつも人がいないはずの廊下だというのにだんだん視線が増えてきているような気すらする。
それに耐えられなくて顔をできるだけ伏せていた。
こんな視線を浴びまくるくらいなら離れたいとも思ったし、おんぶでも担ぐでもいいじゃないかとも思った時もあったけれど……なんだか、この体勢から離れたくはなかった。
……だって、なんか変なんだけど、安心感が心地よくて。
普段の自分なら突き放しているところだったのに、なんだか柄にもなく甘えたい気持ちがあったんだ。
少しだけ、保健室までのたった数分だけ。
保健室まで行けばきっと先生や寝ている生徒なんかがいる。
だから、それまでは……。
ぎゅっと、祐斗の肩に乗せていた手を握りしめた。
ドクドク暴れる鼓動の理由になんて気付きたくもなかった。
―――――けれど、保健室に着くと、昼休憩をしているのか、保健医はいなかった。



