じっと見つめられる顔。
やめて、見ないで、早く保健室行くなら行ってよ。
カーテンの閉まっている音楽室、赤くなってるだろう顔が見えない暗さだろうことだけが救いだと思ってた、のに。
「お前」
「……早く、行けば」
「……ふっ」
いきなり笑われてわけのわからない状態にさらに混乱する頭。
「なに、いきなりっ」
「お前照れてんのわかりやすすぎ」
「な……!!」
熱を持った顔が見えなくてもバレているとはやっぱり祐斗は油断ならない。
ぐっと近付く顔、一瞬のことですぐには対応できず一歩遅れてから反らした顔。
また笑う気配を微かに感じた。
こいつ、あたしのことからかってる?
からかってるよねぇ?
「まじムカつく」
「別に遊んでるわけじゃねーよ」
「遊んでんじゃんか」
「遊んでねーよ」
「遊んで……っ」
気付けば、言い返すために目を向けたその隙を突かれ、迫っていた祐斗の顔。
同時に感じる唇の柔らかさ、射貫くような瞳。
あたしは……なぜだろう。
それ以上の抵抗をやめていた。
前の時よりも長い、ただひたすら長い、口付けだった。



