音楽室に来ると、カーテンがひいてあるままの暗闇がそこにあった。
扉を閉めてしまえば防音設備の整った、二人だけの静かな空間。
「それで、何がまずかったのか見当ついたか?」
あたしの肩をつかみ、目を見て聞いてくる祐斗に、あたしは首を横に振る。
なんでちゃんと逃げたのに、責められているのか。
「わかった。じゃあ、普通の女子高生は、お前以外の女子高生なら、三階の窓から飛び降りるようなこと、すると思うか?」
そう聞かれ、数秒考える。
あたし以外の子?そりゃあもちろん飛び降りたらダメだ。
「普通の子は危なくない?」
「お前それを有紗に見せたんだぞ、普通じゃねぇだろうが」
そう言われてみれば……そうかもしれない。
え、あぁそうか、そう言われてようやく自分の失態に気が付いた。
普通の、祐斗の彼女であることを選んだ自分には相応しくない行動だったこと。
あぁ、早速やっちゃってたのか、自分。
「お前バレたいの?」
「バレたくない」
「もう今更な話だけどな」
舌打ちをする祐斗に、どうごまかすか、というかごまかせるもんなのかともやもやとした考えが止まらない。



