姫子は嬉々とした表情で、矢継ぎ早に畳みかける。 黒髪の女性――田中は髪をかきあげながら、目を泳がせた。 どうやら本当に人見知りらしい。 「こ、高2で、す……」 「お!後輩かぁ。で、あなたは秋さんの作品のどれが好き?」 しつこく姫子が質問を追加してきたからか、田中は「えっ」と瞠目した。 そして、やはり例によって目をひとしきり泳がせていると、通路から見える客室がガチャリと開いた。