「匠くん……ごめんね、私のせいで」 そばでしおらしくしているのは、姫子だ。 先ほどまで、大ファンの田中秋と再会した喜びの余韻を振りまいていた彼女は、少なからず責任を感じているようだった。 「佐伯さんのせいじゃありませんよ。この子は昔から運動神経がなくって。よく転ぶんです」 母親の真紀子が「ホントに困ったもので」と添え、手を左右に振る。 「そうそう。いつものことだから、平気だってば。お姉ちゃん」 応急処置の済んだ右足を、匠は「ほら」と上げてみせた。