「麻衣お嬢様、おはようございます。朝食の準備ができております」
「……おはよう、黒沢さん」
リビングで出迎えてくれたのは黒沢さん、泉のお父さんだった。
「泉は?」
「それが、お食事を用意し終えたすぐ後にどこかへ行ってしまいまして……」
「……逃げたの?」
わたしがこうして気持ちを落ち着けてようやく来たと思ったら、今度は泉が逃げるなんて。
「後で罰を与える必要がありそうね」
「お嬢様、心なしか嬉しそうに見えますが、やはり泉がいないと寂しかったのですね」
「う、うるさいわよ!別にそんなんじゃないわ」
でも、確かに帰ってきてくれたことは嬉しい。
別に朝のことも嫌だったわけじゃないし……。
「あ、黒沢さん、泉って昨日……家に帰ったの?」
一度帰って起こしに来た時に寝てしまったんじゃないか……なんて都合のいいことも考えてみたけれど。
「いえ、私がお嬢様のおそばにいろと言いましたので、帰りませんでした。失礼ながらお泊りになられたかと思いますが」
「え、あれ黒沢さんの仕業だったの!?」
そんなこと一言も聞いてないんだけど。