ビックリした顔で俺を見た仁科に、ハッとして手を離した。
俺、さりげなく手握っとったし。
何してん、キモがられるやろ。
謝ろうと仁科を見ると、真っ赤な顔で俯いてた。
………え?何で赤いん?
予想外な反応に戸惑う。
「……悪い。雑巾大変やから、俺やるよ。貸して」
早口でそう言い、雑巾を受け取った。
代わりに仁科にホウキを渡す。
また掃除を始めようと、床に膝を着いた俺のYシャツの袖を、遠慮がちに掴んだ。
驚いて顔を向けると、仁科が頬を染めて呟いた。
「…ありがとう」
照れ笑いを浮かべた仁科に、心臓が壊れるんじゃないかってくらいに大きく鳴っ
た。
ヤバい……これは、本当にヤバい。
仁科は他に好きな奴おんのに、好きになっても無理なのに。
それでもやっぱり、仁科が好きやねん……。


