楓と椿「小春さん姐さん、おおきに お先どす〜。」

小春「へぇ。おおきにね」


京華の店出しの日から、早一年が経過した。


半年前に春照が置屋を卒業し、現在この置屋に残っているのは
楓、椿、京子と京華、それについ先日芸姑になった小春 の五人だ。


椿達二人は、仕込みの生活にもすっかり慣れ
少しずつ、舞も習わせてもらえるようになってきている。

通り掛かった小春に食事前のことわりを入れた二人は、今日は久々に一緒に夕食を食べるのだといい、たいそう嬉しそうである。



小春(ハァァ〜。それに比べ、あの二人はなんでこうもあかんのやろうか…。)

仕込みの楓たちに向けた笑顔とは裏腹に

どこか苛立った様子の小春。




…と。

小春「あ〜もぉッ!!京子はん、京華ちゃん!! はよせんかったら、あんたらほんまに置いてくでッ!?」

二階に向かって、小春が大声で怒鳴る。


苛々の原因はこれだったらしい…。


京子と京華は、二人して着付けが遅れてしまったのである。


予定の時間はとうに過ぎてる。


もっとも、今夜お相手させて頂くのは馴染みのお客様だから、走って行って謝れば 軽いお咎め程度で済むであろうが



それにしてもだ。あの二人は最近ず〜っとこの調子…。

困ったものである。


(これはやっぱり、座敷の後でもう一喝入れたらなあかんかねぇ…)


小春が頭を抱えていると